PROJECT:地域事業部店舗の”食”の取り組み 生活に欠かせない“食”の領域で
社会と暮らしを変えていく

“食”の専門売場を導入したこれまでにない形態の店舗として、2018年にオープンした無印良品 イオンモール堺北花田。無印良品における新たなビジネスモデルを打ち立てた店舗に、2020年春、思わぬ転機が訪れます。

MEMBER

  • 立石 将和

    立石 将和 南大阪担当コミュニティマネージャー(兼)無印良品 イオンモール堺北花田 店長

  • 新井 碧

    新井 碧 無印良品 イオンモール堺北花田 副店長

※組織名称は2021年9月1日のもので掲載しています。

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“食”の専門売場を備えた第一号店

 無印良品イオンモール堺北花田は、衣・食・住の真ん中にある“食”を大事にし、事業の中心に据えて行動しています。無印良品 イオンモール堺北花田は、食物を単に購入する場だけではなく、生産者や生産現場とのつながりや交流を通じ、食物と人との関係を再度見つめなおすきっかけとなる場になることを目指し、2018年3月にオープンしました。

 無印良品としては初となる、“食”をテーマとした大型専門売場。ここでは、朝採れ野菜や精肉、漁港直送の鮮魚など産地直送を基本とした生鮮食品が販売され、地域に暮らす方々の食卓を支える店舗へと成長しています。

 「これまで無印良品で扱ってきた食品の領域とは異なる、日々の暮らしに必要な食を担うスーパーマーケットを店舗で表現できないかという議論は、以前より社内で行われていました。そこに初めて挑戦したのが、無印良品 イオンモール堺北花田です。それまで無印良品で大きく扱うことがなかった生鮮食品の売場を実現できたのは、本当に大きな出来事だったと思います」と、店長の立石は言います。

 「客層は他の店舗と大きく変わらないのですが、生鮮食品を扱っていることもあり、週に2~3回来店されるお客様が大勢います。この来店頻度の高さは店舗の最大の特長であると同時に、店舗が成長する上で大事な要素になっていると思います。お客様の来店頻度を上げていくことは無印良品 イオンモール堺北花田だけでなく、全社としても達成しなくてはならないポイントです。そういった意味でも他店舗の5年先を走る道標になることを、普段から心掛けて経営しています。」。

 オープン後は「おいしいってなんだ」をテーマに、つくる人と食べる人をつなぐ場としてさまざまな取り組みを積極的に実施し、食を考える場としての認知も高まっていました。開店2年目を迎えた2020年の春、店舗のオープンに匹敵するような、大きな転機が訪れます。

STORY/02

予期せぬ形で訪れた転機

 2020年4月に新型コロナウイルス感染症対策として発令された、第一回緊急事態宣言。対象区域には店舗が位置する大阪府も含まれていました。多くの店舗が休業を余儀なくされる中、生活必需品を取り扱う無印良品 イオンモール堺北花田は、各所との協議の結果、営業することを決定します。

 「店舗で働くスタッフも不安の中で売場に立っていたと思います。そして、開店すると普段よりも多くのお客様が目の前にいらっしゃる。誰もが先が見えない中複雑な気持ちを抱えていたと思いますが、その中でもスタッフ一人ひとりがとにかく頑張ってくれました。目の前のお客様のためにどう役に立てるかを考え、その結果店舗の売上は大きく伸長し、堺のお客様の無印良品に対する立ち位置が変化したと感じています。

 また、併設されているCafé&Meal MUJIは当初ビュッフェスタイルで運営をしていたのですが、感染症予防対策を行う上で業態を整理することになりました。使用する食材はイオンモール堺北花田らしさをしっかり残しつつ、他のCafé&Meal MUJIと同じ業態に変更することとなったのです。フードコートをリニューアルする計画はコロナ禍以前からありましたが、この変更にともない、急遽前倒しで計画を進める必要が生じました。そこで新たな試みとして立案されたのが、地元の堺で営業を行なっている企業に、協業という形で出店していただく事業プランでした」。

 フードコートの人気コーナーとしてすでに定着していた新鮮な魚貝を提供する「鮓(すし)」に加えて、地域に根ざした食材の中でも取り扱いの要望が多かった食材を揃える「糀(こうじ)」「茶」「蒸」の3つのブースを新設することが決定します。店舗の顔である“食”をさらに充実させながら、リニューアルの準備が進められていきました。

STORY/03

共通項は“地域の役に立ちたい”という思い

 そしてリニューアルオープンを迎えた、2021年2月。外で飲食をすることが難しい社会情勢をふまえ、各ブースでは多くのメニューの持ち帰りに対応する工夫がなされました。これまでとは異なる形式で営業が始まったものの、豚まんや茶、糀など堺に暮らす人々にとってなじみ深い“食”を楽しめるブースは、多くのお客様から好評を博しています。

 「協業するにあたって情勢など心配されていた点はあったかと思いますが、各社様の新しい分野に挑戦したいという気持ちの強さを感じました。現在もほぼ毎月、新しいメニューを開発するなど、引き続き試行錯誤を重ねてくださっています」。

 リニューアルオープンの直前に副店長として着任した新井は、各社と日々やりとりをする中で「ただ商品を売るのではなく、地域の方々に食の文化を伝えていきたいという思いで商いをされていることが強く伝わってくる」と、話します。「各社がそれぞれの価値観を持ったうえで運営をしていますが、“地域の役に立ちたい”という根本的な思いが良品計画と一致しているからこそ、良い関係を築けているのだと思います」。

 また今回のリニューアルにあたり同時に行われたのが、2018年の発売当初から店舗で取り扱っていた、冷凍食品の売場拡大でした。「冷凍食品が発売された当時は商品の種類が今ほどなく、お客様のニーズにも応えきれていませんでした。そこで、リニューアルにあたり食品部門を強化する中、冷凍食品には特に力を入れたいと考えました」と、立石は言います。その結果冷凍食品の売上は4倍近く上がり、“食”を通して地域の役に立つ店舗としての基盤は、さらに揺るぎないものへとなりました。

STORY/04

社会と暮らしを、堺から変えていく

 第二創業を迎え、良品計画として新たな企業理念を掲げる中、“社会と暮らしの役に立つ”ことは“社会と暮らしを変える”ことだと立石は言います。

 「無印良品 イオンモール堺北花田は、第一次産業の生産者の方々とつながりがあるという強みを持っていますが、生産者の皆さんと一緒になって農業に取り組むくらい、地域に根差し、地域と一緒に成長していくことが本当の理想です。今後も店舗としては食の分野に注力をしていきますが、あらゆる取り組みを通して、地域や社会を堺から変えていく店舗になりたいと考えています」。

 また、地元企業との協業や、地域課題を解決する取り組みを行う上で必要となってくるのが、事業性と公益性とのバランス。良品計画として行うべきことなのか、継続して行えることなのか、などを見極める重要性を感じながらも、性急に結論を出さないよう心がけているとも立石は言います。

 「もし継続的に協業することが難しいとしても、例えばスポットで販売やイベントを行ってみたり、MUJI passportなど我々が外部に発信できる媒体の中で取材をさせてもらったり、様々な繋がりをつくっています。少しでも接点があるというのは、その後あらためて関係を築くことになったとき、やっぱり大きな違いが出てきます。なので、何事もすぐ“やる”か“やらない”だけで判断せず、可能性の芽を摘まないようにすることも大切かと思います」。

 店舗に入荷した商品のお知らせやイベントの告知だけでなく、堺に関する情報も発信するMUJI passportの取り組みについては「店舗スタッフによる活躍が大きいです」と、新井は言います。「2021年夏からスタートした、南大阪におけるカレーの文化を紹介する『南大阪カレー研究会』のコーナーも、彼らが自発的に立ち上げたものです。立石さんも私も関東出身で、堺について知らないことがまだまだあります。私たちから要望を出すのではなく、店舗スタッフから生まれたアイデアを大切にしながら、今後も情報発信を行なっていきたいです」

 新規出店が行われる際、地域事業部のメンバーやパートナー企業の方々が視察に訪れる、いわばモデル店舗のような存在へと成長した無印良品 イオンモール堺北花田。社会と暮らしのかたちを変える、新しい経営モデルが堺で打ち立てられる日も、そう遠くはないかもしれません。