国内と海外、両方の視点を活かしながら無印良品をつくっていきたい

執行役員 ソーシャルグッド事業部 部長 河村 玲(2019年入社) 2019年7月、中途入社。入社時よりソーシャルグッド事業部に配属。スペースグッド担当部長として現在に至る。転職前は百貨店にてバイイング、商品企画開発、マーケティング、販売まで一連のマーチャンダイジング活動を行いながら、旗艦店リニューアル、新規店プロデュース、新規事業開発などを手掛けてきた。

変換点にある小売業で、新たな姿を描きたい

 人生の転機になったのは、ある社長の言葉です。前の勤務先で私が担当する事業の終了が決まり、取組先の社長へ報告に伺ったときのことでした。「儲かるかどうかも大事だけど、社会を、産業をどうしたいかを考えることも大切にしてほしい」。その投げかけが、本当にやりたいことを深く考えるきっかけとなりました。
 これまで続けてきたこと、そして、これからも続けていきたいことは、商いを通じて世の中に貢献していくことだ。そう強く意識するようになったときに巡り会ったのが、私と同じ考えを事業の根幹に掲げている良品計画でした。近年、小売業は大きな変換点にあり、新型コロナウイルスへの対応により、さらに変化のスピードを増しています。この変化の渦の中で、新しい小売業の姿を描きたい、と良品計画への転職を決めました。
 入社後の配属先は、ソーシャルグッド事業部でした。他の会社には恐らく存在しないこの部署の名前は、良品計画が掲げている「感じ良い暮らしと社会の実現」から来ています。無印良品の店舗を軸として、地域にくらす方々や自治体とともに、地域を活性化していく「エリアリノベーション」に取り組むなど、今後の無印良品の、また、小売業のあり方を模索し、実践するためにある部署です。

押し付けるのではなく、巻き込まれる

 どんなに良いアイデアでも、よそ者が押し付けたものは「地域には地域のくらしがある」と受け入れてもらえなくて当然です。だからこそ、良品計画では、地域との取り組みの主役は、そこにくらす方々だと考えています。地元住民の方はもちろん、地元企業や自治体、教育機関、色々な立場の方々をつなぐゆるやかな地域組合として良品計画が介在し、地域社会に巻き込まれていく。それが、いま目指している無印良品のあり方です。2020年7月、新潟県上越市の直江津ショッピングセンターにオープンした無印良品 直江津は、その実践例だといえるでしょう。
 2019年7月、入社2日目に訪れた直江津ショッピングセンターは、1階2階の半分が空き店舗となり、来客が見込める都心部での出店経験しかなかった私にとっては「ここでやれるのか」と不安になるような光景でした。
 しかし、2度、3度と通ううち、気がついたことがあります。それは、いつも年配の方々が集まっているということです。ここは、直江津地区の方々に愛されている。その事実に可能性を見出すことができました。年配の方だけでなく、そのお子様たちや、お孫さん、三世代が楽しく過ごせる「くらしの真ん中」となるような店づくりと、その店舗を軸とした街づくりが始まりました。

正解はひとつではないから、問い続けていく

 無印良品が直江津地区で関係性を築いていく上で、大きな役割を果たしたのが2019年12月に実施した「暮らしの編集学校」という社内研修プログラムです。上越市で活躍されている方をメンターに招いてフィールドワークを実施し事業プランを構想する、という研修に、私はコーディネーター役で参加しました。社内公募で集まったメンバーのほか、自治体の方々、直江津ショッピングセンターを運営する頸城自動車にも参加していただきました。
 地域でくらす方にとっては日常の光景でも、よそ者が見ると「すごい」と感じることは結構あるものです。発見した上越の魅力から事業プランを起案し、上越市長にプレゼンテーションすることが研修のゴールでしたが、「市役所内だけでは出てこないアイデアだ」とプランを評価いただき、その後の上越市、頸城自動車、良品計画の三者での「地域活性化に向けた包括連携に関する協定」締結へとつながりました。この研修が、無印良品は単に出店するだけじゃない、本気で地域活性に取り組みたいんだ、という想いを自治体や、地域の方々に伝えるきっかけになったように思います。
 朝市への出店や、バスでの移動販売など、提案したプランのいくつかはすでに形になっており、地域の方々からも好意的に受け入れていただいています。ソーシャルグッド事業部として、店舗と連動して今後も50個以上の活性化プランに取り組むことを予定しています。
 無印良品 直江津は、これからの小売業の一つのあり方かもしれません。しかし、当然のことですが、地域によってまったく違うあり方もあるはずです。また、お店は始まったばかり。これから市民のみなさんと自治体のみなさんと共に作っていく「もっと楽しく役に立つお店づくりと街づくり」がエリアリノベーションを確固たるものにしていくはずです。
 今後の小売業はどうあるべきか。いち商人として実践しながら、新たな答えを探し続けていきたいと思っています。

自分を商品に例えたら

肩の負担を軽くする 撥水コットン リュックサック

毎日使っているリュックサックです。疲れにくく、容量も大きく、収納も充実しているので全国津々浦々への出張時も使っています。「今後の小売業はどうあるべきか」そんな商人としての究極の問いに対して、今までの知識と経験と共に、新たな知見をたくさん収納して、未来に向けて歩いていきたいと思います。

※組織名称は2021年9月1日のもので掲載しています。