PROJECT:無印良品の「食」の表現と開発 10年先に向けて「食」に込められた無印良品らしいメッセージ

2019年4月に世界旗艦店としてオープンした無印良品 銀座。店舗の顔となる1階フロアで真っ先にお客様を迎えるのは新鮮な野菜と果物。パンの焼ける香ばしい匂いに、お茶の葉のいい香りも漂っています。衣・食・住、くらしの営みの中心である「食」に注力するという無印良品の今後の姿勢が強く反映されているこのフロアを担当したのが、榊でした。

MEMBER

  • 松枝 展弘

    榊 かおる 無印良品 銀座 開店当時:無印良品 銀座 食品部門 マネージャー
    現:食品部 商品開発担当 菓子・飲料担当

※組織名称・掲載内容は取材当時のものです

STORY/01

旗艦店で10年後の無印良品の「食」を表現する

 無印良品の900店目の店舗として、そして世界旗艦店として。2019年4月4日、無印良品 銀座はオープンしました。目玉となる取組みが満載の1階フロアを食品部門マネージャーとして開店準備の段階から担当したのが榊でした。

 有機栽培や、減農薬などこだわりをもって育てられた旬の野菜や果物が並ぶ青果売り場に、その野菜や果物を活かしたジューススタンド、お茶を量り売りするブレンドティー工房、WEB予約ができるベーカリー、さらには日替わり弁当のデリバリーまで。無印良品にとって、また、榊にとっても初の取組みばかりでした。

「世界中からお客様が訪れる銀座にある旗艦店。無印良品 銀座は、いわば無印良品の世界代表選手です。開店から1年間で世界中から300万人以上のお客様がご来店くださっている店舗だからこそ、無印良品が目指す『食』への取組みをしっかりと表現しなければならないと考えていました。また、全店に先駆けたさまざまなトライアルも旗艦店が果たすべき役割だと思っています。

 たとえば、効率や値段を重視するなら、食品のパッケージはプラスチックやビニール製にしたほうがいいのですが、環境への負荷を少しでも軽くするため、極力紙の素材を選びました。手書きPOPの導入とその効果の検証や、日替わり弁当のデリバリー、ブレンドティーの販売など、食品部が企画した新サービスをお客様に最大限楽しんでいただけるように、店舗で試行錯誤しながら実践し、その結果を本部にもフィードバックしています」。

STORY/02

新任店長時代の苦い思いが、今につながっている

 榊が無印良品 銀座の新店準備室に着任したのは、2018年12月。約5ヶ月の準備期間で、食品担当の販売スタッフの代表として、これまでにない売り場づくりや、新サービスの実現を推進しました。

「売場も、新しいサービスも、私一人でどうこうできるものではありません。売場開発、商品開発、宣伝販促、広報、情報システム、人事、経理…など、本部のさまざまな専門分野のプロたちと連携を取りながら、課題点を一つひとつクリアしていきました」。

 本部スタッフと連携を取りながら、旗艦店の注力フロアづくりをやりきることができたのは、新任店長時代の苦い経験のおかげだと榊は言います。

「初めて店長になってから半年間、まったく自分の店の目標を達成できませんでした。それまでは目の前の目標に全力で向かっていけばよかったのですが、店舗という組織の目標は、私だけでは達成できません。さらに、予算にもマンパワーにも限りがありますし、立地などの制約もあります。やりたいことをすべて全力で、というわけにはいかないのです。

何をやって、何をやらないのか。最終責任者である私が、課題に取り組む優先順位を必死に考え抜かなければ成果が出ない、ということを痛感しました。

また、店舗で働くスタッフは、社員だけでなく、週10時間だけ働くパートタイムの方や、学生さんなど、さまざまな立場の集団です。価値観はみんな違って当たり前で、そのことを理解しないと、チームは機能しません。

無印良品 銀座のオープンにおいて、多様な個性をもつメンバーの力を借りて、一つに取りまとめることができたのは、店長としての経験があったからこそだと思っています」。

STORY/03

「わけあって、安い」は、食の課題も解決する

 榊は、2013年に青果卸会社から良品計画へ転職しました。「わけあって、安い」をキャッチフレーズとする無印良品の商品開発の発想で、食品、特に、生鮮食品の流通が抱える課題を解決したいと考えていた、と榊は言います。

「見栄えのために捨てられているものを活用すること。生産工程で規格外とされてしまっていたものを見直し、商品化すること。包装を簡略化すること。無印良品の商品開発の発想は、すべて、形が不揃いだったり、少し虫が食っただけで廃棄されてしまう生鮮食品にも当てはめることができると思っていました。

入社当時は、無印良品では生鮮食品を扱っていなかったのですが、ものごとの本質にこだわり、くらしへの総合的な提案をしている無印良品なら、いつか生鮮食品も販売するようになるはずだ、と勝手な思い込みと、期待を込めて入社を決めたんです」。

 その期待は、入社から5年目で現実になりました。2017年には当時の旗艦店、無印良品 有楽町で青果の取り扱いが始まり、その後も、無印良品 銀座を筆頭に、青果を取り扱う店舗の数は増えています。2019年12月から取り扱いが始まった「成田農園の不揃いりんご」は、まさに榊の考えていた無印良品らしい商品です。

「無印良品は、2030年ごろまでに食品の売上構成比を30%に増やすことを目指しています。単に売上を追求するのではない、無印良品らしい『食』への取組みに力を入れた店舗は、今後一層、増えていく予定です」。

STORY/04

商品で、お客様とコミュニケーションする

 無印良品 銀座の立ち上げを無事にやり遂げた榊は、2020年より食品部で商品開発を担当しています。商品開発という仕事は、企業によって担当範囲が異なりますが、無印良品の場合、商品のコンセプト立案、味や形の決定だけでなく、販売計画の立案と分析、売場開発・VMD部やオープンコミュニケーション部と連携して売り場のプランニングや販促ツールの作成にも携わります。商品を通じて、お客様に伝えたいことは何か。売り場でどう見せれば、商品に込めたメッセージがお客様に伝わるのか。さまざまな部署と連携を取りながら、商品を通じたお客様とのコミュニケーションを考え抜く仕事が、無印良品の商品開発です。

※売場開発・VMD部=商品を見やすく、買いやすい売場をつくる(Visual Merchandising)業務を担う部
※オープンコミュニケーション部=商品プロモーションなど、お客様との双方向コミュニケーションに関わる(Open Communication)活動を担う部

「商品名や、パッケージに書かれている商品の魅力を伝えるための文章も、商品開発担当が考えます。自分たちがつくったものを、自分たちが伝えたい形で売ることができるのは、無印良品ならではのやりがいであり、強みだと思います。前職の青果卸の場合、物も情報も集まってくるのですが、最終的に商品をどう売るかは小売店に委ねるしかありません。多くの商品が、価格と規格といった既存の判断基準だけで判断されていて、もっと本質的な良さをお客様に伝えたい、と思ったことも無印良品に転職した理由です」

 現在、榊は、菓子・飲料担当として、菓子全般の商品開発を担当しています。「いずれは生鮮食品の分野で、無印良品らしい世の中に役立つ商品を送り出すことが目標です」と語る榊。その目標は、そう遠くない日に実現しそうです。